結構、ショック…ひそかにバカにされている!? 私たちが「させていただく」を乱用する理由

人間関係

 

人生にはいろんな課題があり、社会には多くの問題がありますが、今の私たちにとりあえず必要なのは「『させていただく』を使わない勇気」です。まずは、できることから手をつけていきましょう。自分を磨くとか人生を切り開くというのは、きっとそういうことです。

 

 

■ちょっとメールを読み返しただけでたくさんの実例が

 

いつの頃からか、メールでもSNSでも実生活の場面でも、「させていただけたら」や「させていただきます」が目につくようになりました。胸に手を当てると、自分もけっこう使っている気がします。ためしに、この2~3日に受け取ったメールを読み返してみました。

 

「原稿をお受け取りさせていただきました」

「以前、お尋ねさせていただいた件についてですが」

「日時は、あらためてご連絡させていただけたら幸いです」

 

冷静に見れば、どれも必要のない「させていただく」です。いや、丁寧に言おうとしてくれている気持ちは伝わってくるので、不愉快に思うわけではありません。ただ、どことなくギクシャクした文章になるし、あえて言ってしまうと、ベースとしての無神経さや「何も考えていない気配」を感じてしまいます。くわばらくわばら、です。

 

ちなみに、上の3つの例は、それぞれ次の表現で何の問題もありません。

 

「原稿、お受け取りいたしました」(「お受け取り」で敬意を示している。珍しい言葉を使いたければ「拝受いたしました」という言い方も)

「以前、お尋ねした件についてですが」(「お尋ね」で尊敬を示している。自分がへりくだって「お伺いした件についてですが」でもOK)

「日時は、あらためてご連絡いたします」(「ご」でちゃんと丁寧さを表現している)

 

 

「させていただきます」は、実生活でもよく耳にします。コンビニに行けば「1000円からお預かりさせていただきます」と言われるし、ファミレスでは「ご注文のほう繰り返させていただきます」に遭遇しがち。「から」や「のほう」も引っかかりますが、それはまた別の問題として、これらも「お預かりします」「繰り返します」でぜんぜんOKです。

 

 

■なぜ、私たちは「させていたただく」を乱用してしまうのか

 

本来「させていただく」は、自分の行為について「相手側や第三者の許可」をもらうニュアンスで、やれることをありがたく思っている気持ちを伝えるための言葉。「先にお昼休みを取らせていただいていいでしょうか」や「先にお昼休みを取らせていただきます」は、やや丁寧すぎる印象はありますが、正しい使い方です。近い関係なら「先にお昼休みを取らせてもらっていいですか」「先にお昼休みを取らせてもらいます」で十分でしょう。

 

上にあげた「原稿をお受け取りさせていただきました」や「お尋ねさせていただいた」は、あらためて許可を得る必要はまったくありません。しかし、私たちはいつのまにか「迷ったら『させていただく』をつける」という癖がついていて、メールなどで2行に1回ぐらい「させていただく」を書いてしまっているケースもままあります。

 

なぜ、そんなにも「させていただく」を乱用してしまうのか。それは「敬語が使えない人」と見られることや、「失礼なヤツ」と思われることを極度に恐れているから。ところが、使えば使うほど、結果として「敬語が(ちゃんと)使えない人」と見られたり、丁寧過ぎてむしろ失礼という印象を与えたりしてしまいます。

 

別バージョンとして、仕事を依頼するときに「○○についてお願いさせていただきたく(ご連絡いたしました)」という表現も、しばしば見ます。お願いすること自体に許可を求める必要はありません。しかも、この言い回しは、発注者が業者的な弱めの立場の人に対して使うことがほとんど。念入りに丁寧に言うことで「下手に出てやってるんだから、おとなしく言うことを聞け」という脅迫めいた気配を感じないでもありません。

 

ことほど左様に、安易な「させていただく」は、ちょっとマイナスの受け止められ方をしがち。無意識に乱用している人もいるでしょうが、多少の疑問を感じつつも「つけておいたほうが無難かな」という誘惑にあらがえず、つい乱用している人も多いでしょう。「『させていただく』を使わない勇気」を身に付けてほしいのは、そういう人たちです。

 

 

■今ならまだ間に合う! 減らすことによって人生が変わる!

 

何を隠そう、単に言葉の問題ではありません。使わない勇気を身に付けることで、ものの見え方や生き方にも間違いなく大きな影響があります。「させていただく」を乱用してしまうのは、事なかれ主義に毒されている証であり、あらかじめリスクや反論を勝手に想定して、挑戦や冒険から逃げている行為に他なりません。新しい一歩を踏み出す気がない自分、自分を変える気がない自分に、必死で言い訳をしている表われとも言えます。

 

今ならまだ間に合います! たとえば「データをお送りさせていただきます」と書きたくなったら、思い切って「データをお送りします」と書きましょう。丁寧に言いたいなら「データをご送付いたします」でしょうか。ひとつ減らすごとに、自分に自信がついたり、視野が広がったり、新しいことを始めたくなったりするはず。やがて、いつも周囲の目を気にしてビクビクして、自分で考えることを放棄していた自分から脱皮できるでしょう。

 

こんなに簡単に、そして着実に人生を変えられる方法はありません。もちろん、使い方として何の問題もなく、どうしても書いたり口にしたりせざるを得ない場面もあります。そのときも、なるべく胸を張って、使っていることを強く意識して使いたいもの。信念に基づいて思いを込めて使われた「させていただく」は、きっと相手の胸に強く響きます。

 

以上、「させていただく」について、長々と書かせていただきました。「なに言ってんだ」と思われた方には、この場をお借りさせていただいて、お詫びさせていただきます。何と言われようと、これからも「させていただく」を使い続けさせていただくという方には、ご多幸をお祈りさせていただきます。と、最後に悪い例を並べさせていただきました。

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

コラムニスト

石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。大人の新しい概念と可能性を知らしめ、以来、日本の大人シーンを牽引している。2004年に出版した『大人力検定』は...

石原壮一郎のプロフィール&記事一覧
ページトップ