指原莉乃の卒業で、長すぎたグループアイドルブームは終焉を迎える!?

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写真:Top Photo/アフロ

 

指原莉乃さんがHKT48を卒業した。

 

指原さんはAKBグループに冠たる、またアイドルシーン全体を見渡しても10年に一人の大逸材だった。以前から兆候はあったが、彼女の脱退によりいよいよAKBや類似グループ達の人気も退潮していくと考えている。平成と共にグループアイドルブームの幕もおりてしまったのではないかと。

 

 

■平成アイドルシーンの変遷

 

平成はアイドルシーンの軸がソロからグループへと移り変わった時代だった。90年代までは森高千里さん、広末涼子さん、鈴木亜美さん、松浦亜弥さんらソロのスターがコンスタントに登場していた。しかし次第にSPEEDやMAXなどダンス要素を全面に押し出したグループがあらわれ、2000年前後にモーニング娘。が台頭するとその後はほとんどグループ一辺倒となった。

 

モーニング娘。の特徴は運営サイドの主導権、プロデュース力の強さだった。安倍なつみさん、後藤真希さん、加護亜依さん、辻希美さんなどソロでも通用する個性的なスターを抱えていたが、それぞれあくまでグループの1メンバー。"卒業”してもその都度、新メンバーが加入してグループは維持されてゆく。そのスタイルはAKB48ら後進にも引き継がれ、爆発的なグループアイドルブームを引き起こして現在にいたっている。

 

グループアイドルには大勢で歌い踊る華やかさやメンバー間の競い合いなど独特の魅力がたしかにある。しかし猫も杓子もグループアイドルという現状は、別に音楽ファン、アイドルファンの側から要求があってこうなったわけではない。これはプロダクションやレコード会社など、運営サイドの都合でしかないのだ。

 

 

■グループアイドルが量産される理由

 

芸能界は元々、一発当ててナンボの世界。アイドルに関しても70年代、80年代あたりまでは運営サイドが「この子に賭けた!」とスターの卵を発掘し、その育成と売り出しに心血を注ぐというパターンが多かった。夜討ち朝駆けの営業活動、寝る暇もないキャンペーン、暴力も辞さないレッスン、マネージャーが同居してでも徹底するプライベート管理……。運営サイドもタレントも苦しいことこの上ないが、夢のためなら死もいとわない……まだまだそんな浪花節が通用するご時世だったのだ。

 

しかし社会が成熟し、芸能界でもコンプライアンス遵守が重視されるようになった今ではそんなわけにはいかない。プロダクションはスタッフの健康で文化的な最低限度の生活を保障しなければならないし、タレントに対してもそこまで無茶な管理はできなくなった。

 

心身の不調、心変わり、引き抜き……10代や20代のタレントなんていつ辞めてしまうかもしれない不安定な存在だ。そこに会社の命運やスタッフの人生を賭けるわけにはいかない。今や堂々たるジャニーズ事務所も1970年代後半には郷ひろみさんが抜けたせいで経営が傾いたこともあるのだ。そこで有難いのがグループアイドルというシステム。

 

とりあえず一つのグループにメンバーを大勢集めておけば誰が抜けても致命的な痛手にはならないし、手間もはぶける。活動する中でプロ意識の芽生えたタレントが出てくればその才能に合わせて個別に伸ばしていけばいい。グループアイドルは運営サイドがリスク回避しつつ安定した経営をするのに非常に便利なシステムなのだ。

 

 

■時代はすでにアーティストブーム

 

かくしてグループアイドルは日本の芸能界を制するまでに成長していったわけだが、あまりに流行りすぎたものが飽きられてしまうのは世の常。2018年の年間ヒットランキングを見るとわかりやすいが、CDセールスを主にカウントする『』ではAKB48や乃木坂46がトップ10をほとんど独占しているが、音楽配信サービス『』を見るとトップ10は米津玄師、MISIA、星野源などアーティストの楽曲がほとんどで、女性アイドルは一切含まれていない。2019年はすでにアーティストブームへの過渡期。もはやグループアイドルを支持しているのは一部のアイドルオタクばかりということだ。

 

グループアイドルブームは長く続きすぎた。文化としては非常に魅力的なものだと思うが、それ一辺倒の時代が長かったことによるマイナスも大きかった。アイドルブームゆえに芽の出なかった才能は数多い。また昨今のグループアイドルの楽曲は一見ポップでテーマ性もありハイクオリティに仕上がっているのだが、どこか薄っぺらく、生身の人間性が感じられない。作り手もいい加減ネタが尽きてしまい、マニュアルに沿った作り方しかできていないのだろう。そんな音楽が工業品のように量産され、無批判に受け入れられる状況ははっきり言って異常。

 

 

■日本の音楽シーンはどうあるべきか

 

音楽とは個性を世に吐いて生きるようなアーティストあってこそのものだと思っている。実力あるアーティストが時代の要求を楽曲として昇華してこそ音楽シーンは豊かになる。そしてアーティストが大衆に受け入れられるようになればその次には現在よりさらに豊かで多彩なアイドル文化が生まれるはずだ。山口百恵さんの成功の陰に谷村新司さんやさだまさしさんがいたように、松田聖子さんの成功の陰に松本隆さんや細野晴臣さんがいたように、モーニング娘。の成功の陰につんくさんがいたように。

 

ソロで売れる成功例が増えていけば、万難を排してそのマネジメントに努めようとするプロダクションも増えるだろう。上手くいけば2020年代には、今やすっかり珍しくなったソロのビッグアイドルなんかも出現するかもしれない。今後の芸能界、音楽シーンの良い形での変化を期待したい。

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シンガーソングライター/音楽評論家

中将タカノリ

シンガーソングライター、音楽評論家。2005年、加賀テツヤ(ザ・リンド&リンダース)の薦めで芸能活動をスタート。深い文学性と、歌謡曲、アメリカンポップスをフィーチャーした音楽性で独自の世界観を構築している...

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