あのバカラともコラボ、関連グッズの売り上げは6年で56倍! 「くまモン」に何が起こったのか──

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「くまモン」が再ブレイク中だ。「手塚治虫」「西郷隆盛」といった偉人を取り上げる「伝記マンガ」シリーズに名を連ね、新年早々、女性週刊誌の表紙も飾った。極め付きはドキュメンタリー番組への出演だ。NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』で「地方公務員・くまモン」として密着された。くまモンは、ご当地キャラ、ゆるキャラの枠を大きく超えて始めている。くまモンと他のゆるキャラは、いったい何が違うのか? くまモンを追いかけ続けるノンフィクションライター亀山早苗が解説する。

 

【くまモンの物語 Vol.3】世界も放っておかない。ゆるキャラグランプリ優勝からの快進撃!

 

筆者がくまモンに最初に会ったのは、ゆるキャラグランプリで優勝した2,3ヶ月後のことだ。キャラクターというものに興味がなかったので、くまモンの存在とグランプリ優勝はニュースとして知っていただけ。

 

たまたま2012年の1月か2月に、熊本へある人のインタビューに出かけた。夜まで取材をして翌日の昼間、地元の人に教えてもらったラーメン店へ行き、店から出るとアーケードの商店街でなにやらパレードをやっている。平日の昼間だから、それほど人は多くない。私は道の向こう側へ渡りたいのだが、パレードが途切れず、なかなか渡れない。そのパレードの中を、黒い物体が飛び跳ねていた。ん? 見ていると、その黒い物体が近づいてきた。わ、これがくまモン! 

 

2018年のくまモン誕生祭での写真。バンドが演奏する中、こんな出で立ちで登場、踊りまくった ©2010熊本県くまモン

くまモンはぼうーっと立っている私の前でピタリと止まり、手を差し出した。思わずその手を握る。もふもふとした感触。くまモンはバイバイというように手を振ると、背を向けた。

 

「くまモン、がんばってね」

 

キャラクターに興味のなかった私でも、そう声をかけたくなる背中だった。くまモンはくるりと振り向くと、また威勢よく手を振り、走っていった。

 

「かわええええ」

 

心の底からそう思った。帰りの空港でグッズを買いあさり、帰京するやいなやパソコンでくまモンの情報を集めまくった。そしてくまモンが東京に出没するたびに会いに行くようになった。

 

くまモン関連グッズの売り上げは、2011年には25億円。それが2017年には1408億円にまで上昇した。なんと6年間で56倍にもなったのだ。

 

グランプリを受賞してからのくまモンの快進撃はすさまじいものがある。

 

12年8月には、熊本県五木村で、当時高さ日本一(77メートル)のバンジージャンプに成功。このバンジーには小野泰輔副知事も参加したのだが、くまモンが成功したことばかりが話題になったと、のちに副知事が苦笑していたことがある。この年の秋からは、「くまもとから元気をプロジェクト!」を始動。東日本の被災地をはじめ、全国を回って、くまモンと熊本から元気を届け続けた。また、12月には米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」の1面にくまモンがとりあげられた。だんだん世界が放っておかなくなっていく。

 

2018年に訪れたフランス・トゥールーズで。チーズ専門店の店主と親しくなり、チーズの配達を頼まれた。自転車で疾走してミッション完了 ©2010熊本県くまモン

13年からはパリでおこなわれている「ジャパンエキスポ」にも毎夏、参加している。それをきっかけに、世界中の有名企業とのコラボもどんどん増えていった。フランスのクリスタルの名門バカラが、クリスタルのくまモンを作り、ドイツのぬいぐるみメーカー・シュタイフが「テディベアくまモン」をつくる。1500体限定で作られたテディベアくまモンは、ネットでのみ買えたのだが5秒で完売。さらにBMWグループの「MINI」からはくまモンの顔の車が発売された。

 

また、県内でも大きな動きがあった。「くまモンに会いに熊本へ行ってもなかなか会えない」という声に応えて、市内繁華街のど真ん中に「」がオープンしたのだ。オープン当日には、くまモンは「MINI」をスクエアに横付けして登場、知事とともにテープカットに臨んだ。知事が、くまモンがちゃんとハサミを入れられるかどうか、心配顔でのぞき込んでいたのを筆者も確認している。この「くまモンスクエア」には、週に5,6日はくまモンが登場、ステージでダンスをしたり、営業部長室で来場者と触れあったりする。毎回、入館制限がかかるほどの大人気だ。

 

13年秋、熊本では「全国豊かな海づくり大会」がおこなわれた。そのために熊本県を訪れた天皇皇后両陛下が、県庁で「くまモン展」を見学された。一説には、来熊数日前に、皇后陛下が「くまモンさんには会えるのかしら」とおっしゃったそう。そこで急遽、くまモンもくまモン展に登場、両陛下の前で「くまモン体操」を披露した。これはくまモンがイベントステージなどでいつも披露するダンスで、熊本の名所が盛り込まれた歌詞と覚えやすい曲が絶大な人気を得ている、くまモンの代名詞ともいえる歌だ。

 

いつも以上にキレッキレのダンスを披露するくまモンを、皇后陛下は知事からもらったくまモンのピンバッジを胸につけて、この上ない笑みを浮かべながら熱心にごらんになっていた。あんなにうれしそうな皇后陛下の表情を見たことはないほどだ。

 

後にも先にも「天覧ダンス」を披露したキャラクターは、くまモンを置いてほかにはいない。さらに、蒲島知事の母校でもあるハーバード大学では知事とともに講演もおこなった。

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ノンフィクションライター

亀山早苗

明治大学文学部演劇学専攻卒業後(専攻は歌舞伎)、雑誌のフリーランスライターに。 ライター歴、もうじき30年。離婚歴1回の現在独身。長い間、男女関係に興味を持ち続け、さまざまな立場の男女に取材を重ねてきまし...

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